
バリアフリーリフォームとは、家の中にある段差などの不便を解消し、より住みやすくするための工事です。
65歳以上の高齢者は、室内の段差につまずいて骨折し、それがきっかけで要介護になるリスクが高まります。室内で少しでも不便を感じた場合は、できるだけ早くバリアフリー化を検討しましょう。
本記事では、バリアフリーリフォームとは何か、場所別の費用相場や、戸建てとマンションの費用の違い、リフォームの進め方のポイントなどを紹介します。
【この記事で分かること】
- バリアフリーリフォームは、家の中で感じる不便を解消して、より住みやすくする工事。特に高齢の方にとって重要。
- リフォーム費用は工事場所や内容により異なり、1万円~1000万円以上など幅がある。
- 高額な費用が生じることもあるため、バリアフリー化を検討するときは補助金や助成金も活用し、計画的に進めるのがポイント。

住宅設備協同組合
東京、神奈川、大阪、兵庫エリアで年間1000件以上の実績を誇る住宅設備協同組合。神奈川県許認可法人(神奈川県指令企支第3453号)、大阪府許認可法人(大阪府指令経支第1061-28号)。リフォームの専門家として、水回り(キッチン、浴室、トイレ)、和室工事、外壁、屋根まで広く深くをモットーにリフォームに関するお役立ち情報を発信。
バリアフリーリフォームって何をするの?

バリアフリーとは、あらゆる人が生活をする中で不便を感じる壁(バリア)をなくそうとする取り組みです。一方、リフォームは現在ある建物や設備に手を加えて、機能やデザインをより良くすることを指します。
バリアフリーリフォームでは、床の段差をなくしたり、手すりを設置したりして、家の中の使いにくさを解消します。
高齢者は特に“転倒”に注意した家づくりを
バリアフリーリフォームは、自分や両親が高齢になったときにぜひ考えてほしい取り組みです。
政府広報オンラインのまとめによると、65歳以上の高齢者の場合、介護が必要になった理由の13.9%を骨折と転倒が占めています。また、転倒・転落・墜落が原因の死亡者数は1万人を越えており、これは交通事故の5倍以上です。転倒した場所は約6割が自宅です(※)。
高齢になると、加齢によって身体機能が低下するため、若いときには気にならなかったような小さな段差でも、つまずいて大けがをする可能性があります。
「慣れた場所だから大丈夫」と油断せず、自宅こそバリアフリーリフォームが必要だと考えて、安心・安全に暮らせる環境を整えることが大切です。
※参考:政府広報オンライン.「たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?」
バリアフリーリフォームの工事内容
バリアフリーリフォームの具体的な工事内容は以下の通りです。
- 段差を軽減する
- 手すりを設ける
- 床を滑りにくくする
- 開閉しやすいドアに変更する
- 室内の温度差を解消する
- 暗い場所に照明を付ける
- 介助スペースを確保する
- 車椅子で移動できる間取りにする
- 家全体を減築する
手すりの設置や段差の解消のように簡単にできるものから、2階建ての家を平屋に減築するような大がかりなものまで含まれます。
【エリア別】バリアフリーリフォームの費用相場

バリアフリーリフォームの工事内容や費用相場は、住宅内の場所ごとに異なります。ここでは、エリアごとに詳しく解説します。
トイレ:5万円~60万円
トイレのバリアフリーリフォームには、手すりの設置のような簡単な工事から、必要に応じてトイレ自体を別の場所に移動する大がかりな工事まで、さまざまな方法があります。
| リフォーム内容 | 費用相場 |
| 手すりの設置 | 1万円~10万円 |
| 床材の変更 | 2万円~10万円 |
| 便器の取り替え | 10万円~30万円 |
| 引き戸への変更 | 5万円~20万円 |
| トイレの空間の拡張 | 15万円~30万円 |
| トイレの場所移動 | 30万円~60万円 |
| 和式から洋式への変更 | 15万円~50万円 |
洗面所・脱衣所:2万円~50万円
洗面所・脱衣所では、手すりの設置や床材の交換だけでなく、バリアフリー対応の洗面台に交換することもできます。
| リフォーム内容 | 費用相場 |
| 手すりの設置 | 3万円~5万円 |
| 床材の変更 | 5万円~10万円 |
| 段差の解消 | 2万円~15万円 |
| 引き戸への変更 | 20万円~40万円 |
| 洗面所の拡張 | 20万円~35万円 |
| 暖房器具の設置 | 2万円~5万円 |
| バリアフリー対応洗面台への交換 | 30万円~50万円 |
浴室:1万円~100万円以上
浴室のバリアフリー化にはさまざまな方法があり、選ぶ方法によって必要な費用が大きく異なります。例えば、手すりや滑り止めを設置するだけであれば数万円で済みますが、浴室全体をリフォームする場合は100万円以上かかることもあります。
| リフォーム内容 | 費用相場 |
| 浴槽に手すりを設置 | 1万円~3万円 |
| 床材の変更 | 10万円~15万円 |
| 段差の解消 | 3万円~7万円 |
| ステップの設置 | 1万円程度 |
| 昇降リフトの設置 | 20万円~40万円 |
| 浴槽の交換 | 50万円~100万円 |
| 浴室全体の交換 | 100万円~150万円 |
キッチン:10万円~150万円
キッチンのバリアフリー化では、食洗機のように炊事を手助けする設備の導入に加えて、キッチン全体の高さを車椅子でも使いやすいように調整することもできます。
| リフォーム内容 | 費用相場 |
| 食器洗い乾燥機の設置 | 10万円~15万円 |
| 電動昇降棚の設置 | 10万円~60万円 |
| IHクッキングヒーターへの変更 | 30万円~40万円 |
| バリアフリーキッチンへの変更 | 50万円~150万円 |
寝室:1万円~30万円
寝室は転倒のリスクが高い場所です。そのため、床材は柔らかくて滑りにくい素材がおすすめです。また、必要に応じてベッドを介護用に変更するのもよいでしょう。
| リフォーム内容 | 費用相場 |
| 手すりの設置 | 1万円~2万円 |
| 畳からフローリングへの変更 | 25万円~30万円 |
| 床材の変更 | 5万円~10万円 |
| 引き戸への変更 | 10万円~15万円 |
| 介護用ベッドの購入 | 8万円~20万円 |
玄関:3万円~60万円
日本の住宅では、玄関に土間が設けられているのが一般的です。バリアフリーリフォームを行う際は、玄関の段差を解消するためにスロープや踏み台を設置することが多くなります。一方、土間自体をかさ上げする工事は、費用が高額になる傾向があります。
| リフォーム内容 | 費用相場 |
| 手すりの設置 | 3万円~13万円 |
| 踏み台の設置 | 5万円~10万円 |
| スロープの設置 | 5万円~45万円 |
| 土間のかさ上げ | 20万円~50万円 |
| 玄関ドアの拡張 | 10万円~15万円 |
| 引き戸への変更 | 20万円~60万円 |
廊下・階段:1万円~150万円以上
廊下や階段をバリアフリーにする場合、手すりを設置したり、滑りにくい床材に変更したり、段差をなくしたりする工事は、それほど費用がかかりません。一方、階段の踏み板幅の変更のような大規模な工事では、100万円以上の費用がかかることもあります。
| リフォーム内容 | 費用相場 |
| 手すりの設置 | 6万円~15万円 |
| 床材の変更 | 6万円~10万円 |
| 照明の変更 | 8万円程度 |
| 廊下の段差の解消 | 3万円~15万円 |
| 廊下の拡張 | 40万円~150万円 |
| 階段に滑り止めを設置 | 1万円~3万円 |
| 階段の踏み板幅や勾配の変更 | 50万円~100万円以上 |
住居によってバリアフリーリフォームの費用に差はある?
バリアフリーリフォームの費用は、住居そのものよりも工事内容による差が大きいです。特にマンションの場合、建物の構造上バリアフリー化が難しく、戸建てよりも工事が複雑になり、費用が高くなることがあります。
【戸建て】目安は300万円~500万円
戸建てのバリアフリーリフォームの費用相場は400万円~500万円です。予算が400万円程度あれば、玄関や洗面所、トイレ、浴室など、段差が気になる箇所を一通りリフォームすることが可能です。また、施工の方法やプランによっては、300万円以下でも間取りの変更を含めて、家全体をバリアフリー化もできる場合もあります。
なお、戸建てはリフォームの自由度が高いため、バリアフリー化と内装・設備の一新などを同時に行うと、リフォーム費用が1000万円を越える場合もあります。
【マンション】目安は400万円~500万円
マンションのバリアフリーリフォームにかかる費用相場は、400万円〜500万円です。間取りを大幅に変更しない場合は、500万円程度の予算でキッチンから水回りまでバリアフリー化できるでしょう。
一方、間取り変更を含むような全面的なリフォームは、費用が1000万円を越えるケースが多くなります。また、マンションの場合は、構造上の制約から玄関ドアの拡張などのバリアフリー化ができなかったり、排水管の位置の問題により水回りの移動や段差の解消が難しいこともあります。
バリアフリーリフォームの進め方とポイント
介護が必要になってから慌ててバリアフリーにしようとすると、想像以上に費用がかかったり、工事期間が長引いて生活が不便になったりする可能性があります。そのため、60代になったらバリアフリー化を早めに検討し、必要な箇所に優先順位を付けて、住みやすい家づくりを進めるのがポイントです。
高齢になったらバリアフリーを検討する
バリアフリーリフォームを検討する一つの目安が年齢です。65歳を過ぎると転倒が大きなリスクとなるため、60代になったら将来の介護も見据えて、改築を検討するとよいでしょう。
なお、60代よりも若い方でも、段差でつまずいたり、手すりがなくて階段の上り下りがしにくいといった具体的な不便を感じている場合は、リフォームの検討をおすすめします。
リフォームの優先順位を決めておく
手すりの設置や段差の解消、水回りのリフォームなどは、できるだけ早めに取り組みたい部分です。ただし、これら全てを一度にリフォームしようとすると、費用が高額になります。
まずは家族全員で話し合い、バリアフリーを含めて希望するリフォーム内容を洗い出しましょう。その上で、リフォームの優先順位を決め、必要性の高いものから実行していくことが大切です。
優先順位や具体的なリフォーム内容を決める際には、専門家に相談するのも良い方法です。
費用を確認し資金を用意する
リフォーム内容がまとまったら、費用相場を確認し予算の枠組みを決めましょう。1000万円など高額になりそうなときは、ゆとりを持った資金計画を立てて早めに準備します。
金融機関によっては、高齢者向けのリフォームローンを扱っているところもあります。商品内容や申し込み条件なども確認してみましょう。
複数のリフォーム業者に見積もりを依頼する
内容と予算が決まったら、複数のリフォーム業者に見積もりを依頼しましょう。相見積もりを取ると相場が分かりやすくなります。見積もりでは合計金額だけでなく、費用の内訳などの詳細な項目まで把握し、分からない点があれば確認するのが大切です。
リフォーム業者を選ぶときは、バリアフリーリフォームの実績を確認しましょう。バリアフリー対応の工事は、通常のリフォームと異なる点が多いため、希望する工事の実績が豊富な業者であれば、納得の仕上がりが期待できます。
担当者に相談しやすいかどうかもポイントの一つです。
リフォーム業者を決めてバリアフリーリフォームをする
見積もりが終わったら、リフォーム業者と契約しバリアフリーリフォームを進めます。契約時は「契約書」を書面など残る形で交わし、約款など他の書類と併せて内容をしっかり確認しましょう。
長期の工事では、現場責任者と定期的に打ち合わせを行い、工事が予定通りに進んでいるか確認します。途中で仕様変更などが発生した場合は、その都度書面で記録します。
大規模なリフォームの場合は、マンスリーマンションなどの仮住まいに移った方が生活しやすいケースもあるため、必要に応じて検討しましょう。
リフォーム後はアフターメンテナンスを活用する
バリアフリーリフォームが完了したら、現場に不備がないかを確認し、問題がなければ引き渡しを受けましょう。また、契約書や保証書などの書類は内容を確認し、今後のために大切に保管します。
リフォーム後は定期点検やメンテナンスを受け、住まいを良い状態に保つことが大切です。また、年数が経過すると新たな改修が必要になる場合があります。その際は、その都度検討し、より住みやすい環境になるようにしましょう。
工事後のアフターフォローまで力を入れている業者であれば、長く付き合いやすいでしょう。
バリアフリーリフォームで活用できる制度
バリアフリーリフォームの内容によっては、補助金や助成金が受けられたり、減税制度の対象になったりする可能性があります。以下に代表的な制度を紹介します。
介護保険法に基づく住宅改修費の支給
介護保険では、要件を満たす人が所定のバリアフリーリフォームをした際、その費用の一部を助成しています。
| 対象 | 内容 |
| 対象者 | 着工日時点で要介護1~5または要支援1・2の認定を受けている者 |
| 対象住宅 | 介護保険被保険者証上の住所に記載のある住宅 |
| 改修内容 | 手すりの取り付け、段差の解消など |
| 助成額 | 上限20万円までの工事で、そのうちの7割~9割 |
手続き時は、担当ケアマネージャーに事前相談が必要です。また、事業に関する問い合わせ先は各市区町村になります。
その他の制度
バリアフリーリフォームに適用できる制度では、他にも「長期優良住宅化リフォーム推進事業」(※1)や「リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)」(※2)があります。それぞれ、一定のバリアフリーリフォームに対し補助金の支給や減税措置を行っています(※3)。
また、各自治体で独自の補助制度や助成制度を実施していることもあります。
リフォーム業者の中には、リフォームに使える各補助金制度の案内や手続きの無料代行をしているところもあります。事前に相談してみましょう。
※1 参考:国土交通省.「令和7年度長期優良住宅化リフォーム推進事業」
※2 参考:国土交通省.「リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)について」
※3 参考:国税庁.「No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」
家の中の段差が気になったらバリアフリーリフォームを検討しよう
バリアフリーリフォームは、家の中の段差をなくしたり、手すりを取り付けたりして、生活の不便を解消する工事です。費用は工事内容によって数万円~数百万円と幅があります。また、各種補助金や助成金もあるため、これらを活用して費用の負担を軽減し、より住みやすい家にリフォームしましょう。
住宅設備協同組合では、適正価格のリフォームはもちろん、各補助金のご案内や手続きの無料代行も実施しています。「リフォームしたいけれど費用が心配……」とお悩みの方は、ぜひ以下よりお問い合わせください。











