
家族のトイレ介助をするに当たって「今のままでは転倒するリスクが高い」「抱え上げる動作で腰に負担がかかる」などの悩みや不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
自宅のトイレをバリアフリーにするには、手すりの設置や床材の変更、洗浄機能の追加など、さまざまな工事が必要です。決してリーズナブルな工事ではないため、どのくらいの費用がかかるのかと不安に思う方は少なくありません。
本記事では、トイレのバリアフリー化にかかる費用や主な工事内容、費用節約のための補助金制度の概要を解説します。
【この記事で分かること】
- トイレのバリアフリー化にかかる費用は、リフォーム内容や箇所によって異なる
- 便器の交換や多機能トイレの設置などは、数十万円になる可能性がある
- 費用を抑えるなら国や自治体の補助金制度の活用を検討する

住宅設備協同組合
東京、神奈川、大阪、兵庫エリアで年間1000件以上の実績を誇る住宅設備協同組合。神奈川県許認可法人(神奈川県指令企支第3453号)、大阪府許認可法人(大阪府指令経支第1061-28号)。リフォームの専門家として、水回り(キッチン、浴室、トイレ)、和室工事、外壁、屋根まで広く深くをモットーにリフォームに関するお役立ち情報を発信。
トイレのバリアフリー化にかかる費用相場は1~30万円

トイレのバリアフリー化にかかる費用相場は、1~30万円です。以下は、工事内容別にトイレのバリアフリー化にかかる費用をまとめたものです。
| 工事内容 | 費用相場 |
| 手すりの設置 | 1~5万円 |
| 床材の変更 | 2~10万円 |
| 段差解消 | 1~10万円 |
| 引き戸への変更 | 5~15万円 |
| 洋式トイレへの変更 | 20~60万円 |
| 昇降機能付き便座の設置 | 20万円程度 |
| 洗浄ボタンの設置 | 2~8万円 |
| トイレスペースの拡張 | 15~40万円 |
このように手すりの設置や床材、扉の変更などの小規模な工事であれば、数万円で施工可能な傾向があります。便器本体の交換や機能の追加、スペースの拡張工事などを実施する場合、費用が高額になる傾向です。
ただし、上記はあくまで相場のため、正確な金額は業者の見積もりでご確認ください。
【工事内容別】トイレのバリアフリーリフォームの内容と費用相場

トイレをバリアフリー仕様にする際は、家族の身体状況や介助の有無などを考慮し、目的に合った工事を実施することが大切です。ここでは、代表的な工事内容を紹介します。
手すりの設置|転倒リスクを軽減する
トイレ内に手すりを設置すると、立ち座りや方向転換の動作が安定しやすくなり、転倒リスクを軽減できます。
手すりには、主に縦型のI型や縦横のL型があります。また使わないときは壁に収納できる跳ね上げタイプや、立ち座りの動作や座った時の安定性をサポートするアームレスト型も便利です。
床材の変更|万が一の転倒に備える
トイレの床材をバリアフリー仕様にすると、転倒防止になるだけでなく、万が一の転倒時の衝撃を和らげることができます。例えば、クッションフロアは表面に滑りにくい加工が施されており、転倒防止に役立ちます。表面の弾力性は、転倒時のけがのリスクを軽減できるでしょう。
また水やアンモニアによる劣化に強く、黄ばみが発生しにくい素材を選ぶことで、長期間衛生的な状態を維持しやすくなります。加えて抗菌仕様の床材を選ぶと、臭いや汚れがたまりにくくなり、清潔で快適なトイレ空間を保ちやすくなります。
段差解消|移動の障害物をなくす
トイレの入り口の段差をなくす工事も、バリアフリー化の代表的な一例です。
数cmの段差であっても、足が上がりにくい方やバランスを崩しやすい方にとっては、大きな負担になるケースがあります。出入り口の段差をなくせば、つまずきや転倒のリスクを抑えられるだけでなく、障害物が減って出入りがスムーズになります。
リフォーム方法は、敷居を撤去して床の高さをそろえたり、トイレと廊下の床の高さを同じにしたりと状況に応じてさまざまです。住まいの構造やトイレの位置によって工法が異なり、費用もそれに伴って変動します。
引き戸への変更|出入りをスムーズにする
トイレの開き戸を引き戸に変更すると、出入りがスムーズになります。車椅子移動の方が出入りする際、開き戸だと扉を押し引きする動作に手間がかかりがちです。
引き戸なら扉を横にスライドさせるだけで開閉できるため、車椅子移動の方や足腰が不自由な方でも出入りがしやすくなります。
設置費用は扉のタイプや設置場所の構造によって変動するのが基本です。ドアだけを交換する場合は数万円で済むこともありますが、ドア枠も含めてリフォームする場合は、数十万円かかることもあります。
洋式トイレへの変更|立ち座りの負担を軽減する
和式トイレから洋式トイレに変更する工事は、バリアフリー化をする際に欠かせないリフォームです。
和式トイレでは深くしゃがむ必要があり、膝や腰に強い負担がかかります。足腰の力が弱っている方や立ち座りの動作が不安定な方の場合、無理な体勢でバランスを崩すリスクも高まります。
一方、洋式トイレは便座に腰を下ろすだけで利用でき、立ち座りの動作にかかる負担が少なくなる点がメリットです。
交換費用は便器の性能や設備、現在の和式トイレの構造などによって変動しますが、先述の通り20~60万円と高額になる傾向です。段差解消や床材・壁紙の変更が必要になる場合、さらに費用が高くなる可能性があります。
昇降機能付き便座の設置|腰や膝の負担を抑える
立ち座りの動作をサポートする設備として、昇降機能付き便座があります。
昇降機能付き便座とは、便座が電動で昇降する仕組みの便座です。しゃがみ込む動作が難しい方でも、便座の高さをその人に合わせて調節できるため、無理のない立ち座りが可能です。製品によっては上下に動くだけでなく、角度を変えられるものもあります。
使用する本人が楽になるだけでなく、トイレの介助者の負担が軽減できる点もメリットです。
洗浄ボタンの設置|無理なく操作できる場所に移動する
洗浄ボタンの設置工事も、トイレのバリアフリー化の代表的な工事です。
バリアフリー設備を必要とする方は、腰をひねってタンク横の洗浄レバーに手を伸ばす動作が負担になる場合があります。手を伸ばしたときに姿勢を崩して転倒するリスクもあるため、壁に洗浄ボタンを設置する工事を検討すると良いでしょう。
手の届きやすい位置に洗浄ボタンがあれば、無理な体勢で操作する必要がなくなります。腰をひねったり手を伸ばしたりする動作も抑えられるため、体への負担が軽減されます。センサーを搭載したモデルであれば、手をかざしただけで洗浄が可能です。
洗浄ボタンの設置費用は、導入するタイプによって異なります。動作が楽になる壁リモコンであれば、先述した2~8万円が目安です。
トイレスペースの拡張|車椅子・介護に配慮した空間にする
排泄の介助が必要な方や車椅子移動の方が家族にいる場合、トイレスペースの拡張工事が必要になる場合があります。トイレ空間が狭いと、出入りがスムーズにできなかったり、介助者が入るスペースがなかったりと多くの問題が生じます。
例えば、一般的な洋式トイレの内法寸法は75 × 165cmです。この広さは正面からの介助はできますが、側面方向に介助する場合は窮屈さを感じやすいです。
車椅子の方が出入りする場合、165 × 165cm程度のスペースがあると、方向転換や介助動作を行いやすくなります。
拡張工事の費用は高額になりますが、家族全員が使いやすいトイレ環境にするために必要になる場合があります。
自宅のトイレをバリアフリー仕様にする際に活用できる補助金制度
自宅のトイレを使いやすい環境に整えたいと思っても、リフォーム費用が気になる家庭は少なくありません。介助が必要な状況では、便器の交換や手すりの設置など必要な工事が多くなり、費用負担が大きくなる可能性があります。
国や自治体では、トイレのバリアフリー化に活用できる補助金制度を設けていることがあります。一定の条件に該当すれば補助を受けられる可能性があるため、以下で主な制度を確認していきましょう。
介護保険
トイレをバリアフリー仕様にする場合、介護保険における住宅改修補助金制度を活用できます。本制度は、要支援・要介護の認定を受けている方を対象にした制度です。
具体的には、バリアフリー化を目的に以下の工事を実施した場合、所得に応じた割合の補助を受けられる可能性があります(※)。
- 手すりの設置
- 段差解消
- 滑りにくい床材への変更
- 引き戸への変更
- 洋式トイレへの変更
- その他必要な住宅改修
支給限度基準額は原則20万円で、うち介護保険から給付される割合は原則9割(上限18万円)です(※)。所得に応じて給付率が変わり、8割(上限16万円)または7割(上限14万円)となる場合もあります(※)。
例えば20万円の工事を行う場合、給付率が9割なら18万円が介護保険から支給され、2万円が自己負担になる仕組みです。
介護保険でバリアフリー化を進める際は、まず工事前にケアマネジャーに相談する必要があります。支給申請は工事後になるため、一連の流れをWebサイトなどで確認しておきましょう。
※参考:厚生労働省.「介護保険における住宅改修」
子育てグリーン住宅支援事業
住宅の開口部・躯体・エコ住宅設備に関する工事のうち、2つ以上を実施し、併せてバリアフリー工事を行う場合、子育てグリーン住宅支援事業を利用できます(※1)。省エネ改修やエコ設備の導入とセットで申請する制度であり、バリアフリー化のみでは対象にならない点に注意が必要です。
補助金額は、以下の通り工事内容によって異なります(※2)。
- 手すりの設置:6,000円/戸
- 段差の解消:7,000円/戸
- 廊下の幅の拡張:2万8,000円/戸
- 衝撃緩和畳の設置(事務局登録の製品に限る):2万1,000円/戸
省エネ工事とトイレのバリアフリー化を一緒に計画する場合は、本制度の活用を検討すると良いでしょう。補助金の上限など詳細な条件については、Webサイトで概要をご確認ください。
※1参考:子育てグリーン住宅支援事業.「リフォーム」.”対象となるリフォーム工事”
※2参考:子育てグリーン住宅支援事業.「リフォーム」.”バリアフリー改修””対象工事内容ごとの補助額”
自治体の補助金制度の有無を確認しよう
国の制度以外にも、自治体で独自の補助金制度を設けている場合があります。
例えば、東京都文京区では「高齢者等住宅修築資金助成」という制度を設けています。本制度は、住宅のバリアフリー化のための修繕工事費用のうち10%(税抜き分・上限20万円)を補助してくれる制度です(※1)。
横浜市では、手すりの設置や床材の変更などのバリアフリー工事、および自立支援機器の導入に対して、住宅改造費の上限120万円まで補助する制度が設けられています(※2)。ただし、介護保険が優先され、併用はできない点に注意しましょう。
このように、自治体によってはトイレのバリアフリー化に使える補助制度が用意されている場合があります。費用を少しでも抑えるためにも、活用できる制度がないかを確認してみましょう。
※1参考:文京区.「高齢者等住宅修築資金助成」
※2参考:横浜市.「住環境整備費の助成」
トイレのバリアフリー化をスムーズに進めるためのポイント
トイレのバリアフリー化を効率良く進めるには、以下のポイントを意識しましょう。
- 使用する人の身体状況を考慮して計画する
- トイレに入るまでの動線もリフォーム対象とする
使用する人の身体状況を考慮して計画する
トイレを使用する人の身体状況に合わせて、設備やレイアウトを選びましょう。例えば、立ち座りがしにくいのであれば手すりを設置する、車椅子を使用する方なら出入り口の幅を広くするなど、その人の身体状況に応じた工夫が欠かせません。
身体の動きに合わせて設備を選ぶことで、無理なく排泄できるようになり、介助者側の負担も少なくなります。
トイレに入るまでの動線もリフォーム対象とする
トイレに入るまでの動線も併せて整えることで、移動中の転倒リスクを抑えられます。
自力での歩行が難しい場合、廊下や出入り口に手すりを設けると良いでしょう。転倒リスクを減らすのであれば、滑りにくい床材に変更するのも選択肢の一つです。
また動線の見直しとして、トイレの場所を移動する工事が必要になる場合もあります。寝室や洗面所の近くにトイレを設けると、移動の負担が軽くなり、夜間の転倒リスクも抑えやすくなります。
トイレのバリアフリー化の費用は見積もりで確認しよう
トイレのバリアフリー化にかかる費用は、行う工事の内容によって異なります。まずは複数の業者から見積もりを取り、費用や工事内容、対応の丁寧さなどを比較することが大切です。
費用を抑える方法として、国や自治体の補助金制度の活用があります。制度によって細かく条件が定められているため、該当するかどうかを確認しましょう。
トイレのバリアフリー化をお考えでしたら、神奈川県住宅設備協同組合にご相談ください。戸建て住宅だけでなく、マンションでの工事にも対応しており、建物の構造や条件、ご予算に合わせて施工プランを提案いたします。 当組合は、補助金手続きの代行もできます。快適で使いやすいトイレ環境の実現をサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
住宅設備協同組合グループ














